「口に合うといいんだがな。」
セントが運ばれてきた料理を眺めながら言った。
「うめー。」
マオはもくもくと食べている。
「食べないの?」
ナイラはセントを見た。
「そちらこそ。」
「僕はもう済ませたもん。」
「お客を優先なくては。」
「別に気にしないぞ?」
マオがパイを頬張りながら言う。
「そうだな、こいつを放っておいたらセントの分までなくなる。」
「うるせぇ。」
今度は野菜をバリバリかじっている。
「じゃあ、もらうか。」
苦笑しながらセントは食べ始めた。
「なぁ…その…」
「ナイラでいいよ。」
クロはまた一瞬複雑な顔をして続けた。
「ナイラはこの館で一番偉いんだろ?どうしてセントはそんな風に喋るんだ?こういう雰囲気の国は身分制度とかあるんだろ?」
「あぁ…そうだね。僕は俗に言う貴族。でも、この人は僕の護衛兼家庭教師だから。」
「…教師?」
「うん。」
「何の?」
「全部。」
「…は?」
「だから、読み物から武術まで全部。」
「要するに、俺が文武両道で万能なんだ。」
セントが胸を張る。
「文…?」
マオが呟いた。片方だけ眉毛が上がっている。
「なんか、強いだけって気がしてた。」
「依頼主相手に失礼な奴だな。お前だって体力馬鹿に見えるぞ。」
「俺だって本くらい読むぞ。」
その言葉に、クロはマオの部屋を思い出してみた。たしかに、本棚には本があった気がする。
「じゃなくてー!本題。」
ナイラがパンパンとテーブルを叩く。
「悪い悪い。」
「生け捕りが何だった?」
「そう、銀髪の女の子を捕まえて欲しいの。」
「銀髪の他に特徴は?」
「うん、可愛いよ。」
「そりゃ主観だろ。」
マオが半眼でナイラを見た。
「僕より頭半分くらい背が低くて、綺麗っていうより可愛い感じ。髪は長いよ。月光色。」
「銀髪って、こんなか?」
マオがクロを指した。
「ちょっと違うかな。金属みたいな銀色じゃなくて青みがかってるの。」
「…めずらしいな。」
「色も白くて、ほわんってした感じ。」
「わかったわかった。しかし、どうすんだソレ。」
「…ちょっと…欲しくて。」
「あ?彼女か?」
「…彼女?」
「恋人だ。」
セントが口を挟む。
「違うよ。あ、違わないのかな?ま、いいや。これからそうなるのかも。」
「略奪じゃねーか!」
マオのごもっともな一言。
「いいや、救出なの。」
「っへーえ。」
「信じてないでしょうソレ。ま、連れてきてもらえればいいんだけどね。」
ナイラは口を尖らせた。





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