6.決意
「…気が済んだか?」
どれくらいそうしていただろう。俺が額をつつくと、まだ少し嗚咽を漏らしながらも頷いた。
「うわ、べたべた…泣いたなー‥。」
文句を垂れつつ胸からちびこいのを引き剥がし、衣装棚から新しい服を取り出した。
「顔、拭かないとな。」
水差しの水を湯に変え、手拭布を浸して絞る。
「目ぇつぶれよ。」
まずちび助の顔を拭き、続いてシャツを脱いで自分の身体を拭く。
「よし。」
新しいシャツを着て再び長椅子に座ると、ちび助が服の裾を掴んだ。
「子供はもう寝ろ。寝台貸してやるから。」
「…沢山昼寝してきた。」
と、首を横に振る。
「ひょっとして、寂しいのか?」
「…。」
当たりらしい。まぁ、仕方ないか。
「じゃあ、これでどうだ?」
近くに置いてあったライラをとり、静かな曲を弾いてやる。
最初は興味深そうに見ていたが、少しすると寝てしまった。
「フィンク。」
小声で呼ぶと、こっそり出てきた。全く、ノリのいい精霊だ。
「悪いんだが、こいつを部屋まで頼む。」
「いいわよ。可愛い子ね。」
「食うなよ。」
「馬鹿言わないで。」
寝顔を見て目を細め、フィンクはナイラを抱えて行った。
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