「…なんで。」
ウエイトレスが行った後、ルークは恨めしげにジェイドを見た。
「いえ、食べたいだろうなと思いまして。」
「ジェイドさん凄いですの。ご主人様のこと、わかっちゃうんですの?」
「お前は黙ってろ。」
隣で嬉しそうにはしゃぐミュウをひと睨みして、ルークは盛大に溜め息をついた。
「カフェだったら紅茶とかコーヒーを頼みたかったなぁ…。」
「しかし、随分と可愛らしい店ですね…」
ジェイドは話題を切り替えた。
大きな窓からの光が明るくて柔らかい雰囲気を作り出している。
置いてある小物も寄せ木の細工や小さな花の飾りが多い。
「だろ?」
「ですが、いきなり行ったこともない店をオススメにするのはどうかと思いますね。」
「だって!…お洒落だったし…。」
「…。」
「前にバチカルを散策した時に見つけたんだ。」
(それで…)
ジェイドは眼鏡の位置を直す。
「こういう店は女性と来る方がいいですね。」
「う…。だって、ナタリアと来たら仕種が変わってるから他の客に見られるだろ?」
何せ、姫君だし。
「アニスはおごれって言って散々注文するだろうし…」
ジェイドはその光景があまりにもリアルだと、こっそり考えた。
「ティアはそんな暇ないって怒るだろうし…。」
「…あなたという人は…。」
額に手をやるジェイド。
「ま、いいでしょう。たまには息抜きも必要ですね。」
「?」
まだ色々言われると思っていたルークは首を傾げる
「あ、来ましたよ。」


「お待たせいたしました〜。レモンティーでございます。」
ジェイドは目の前に置かれたティーカップを持ち上げて目を細める。
「いい香りですね。」
「ありがとうございます。初めはストレートで飲んでいただいても美味しいですよ。」
微笑むウエイトレス。
「どうぞ。」
そしてルークの前にパフェを置く。
「スペシャルオレンジパフェでございます。」
「…どうも。」
ルークは置かれたパフェとジェイドを見比べた。
「野菜ジュースでございます。」
最後にミュウの前に硝子の器と短く切ったストローを置く。
「注ぎ足してご利用下さい。」
硝子のポットにはジュースが入っていた。
「ご注文はお揃いでしょうか?」
「あぁ、ちょっと待って下さい。軽食を頼んでもいいですか?」
「はい。」
「あなたもどうです?今は昼食時ですし。」
「あ、そうだよな。じゃなかったらこんなに空いてないもんな。」
ルークは頷いてメニューを見る。
「じゃあ俺、ホットサンドセット。」
「通常のものと魚介類がございますが。」
「普通で。」
「かしこまりました。」
「ジェイドは?」
「私は…パイのセットを。」
「お肉とお魚がございますが。」
「ミートパイで。」
「はい、かしこまりました。」
「ミュウは〜」
「お前にはサラダやるから。」
「はいですの。」
「しかし昼飯の前にパフェってのもな…。」
ぼやくルークに、ウエイトレスが言った。
「また、後でお持ちしましょうか?」
「あ、じゃあ頼みます。」「はい。」
再びウエイトレスが行ってしまうと、ルークは盛大な溜め息をついた。
「どうかしたんですか?」
「あのパフェ、でかいっつの!」
「えぇ。2、3名様分って書いてありましたからねぇ。」
「はあぁ!?」
ルークの声が裏返る。
「頑張って食べ切って下さい。ファブレ子爵。」
「俺一人で?」
「はい。男二人で一つのパフェをつつくのもねぇ…。」
「……。」
無駄に色々と想像し、ルークは無言でテーブルに突っ伏した。




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