夕食のデザートを賭けて兵士達とあなたがカードをやっているのを見つめる私。
私が座っているのは彼等から少し離れた場所。
僅かに傾いた太陽は暖かく草原を照らし、そよ風が木の葉擦れの音を運んでくる。平和なんだ…って体感出来る。
「セリスっ。」
ティナが走って来た。
「ティナ。久しぶり。」
「こちらこそ。」
草の上に並んで座る。
「はい。」
渡されたのは小さな籠に入ったサクランボ。
「どうしたの?これ。」
「エドガーがくれたの。食べよう?」
「えぇ。」
ぽつりぽつりと食べながら、今日までのことや今している事について話す。
「今はね、フィガロで働いてるんだ。でね…」
にこにこと話すティナ。帝国にいた頃とは別人のよう…。
「…ねぇ、ティナはケフカを憎んでる?」
唐突な質問に、ティナはちょっと驚いた顔をした。
「どうかな…もう、よくわからないや。たしかにケフカが操ったから私は殺人兵器だった。
でも…私が彼の元にいたから今があるんだと思うの。」
「それって…」
「ある面では感謝しなきゃいけないのかもね。…あぁ…っと。」
ティナは伸びをして草の上に転がった。
「本当に不思議な子ね、あなたは。あれだけの扱いを受けたんだから、恨んだり憎んだりして当然なのに。」
私も寝転がる。
「ケフカがいたから私は皆と会えたんだもの。彼がやったことは許されることじゃないけど…」
そこで急に黙り込む。
「どうしたの?」
「うん…」
妙に歯切れが悪い。
「本当はね…それだけじゃないんだ…。」
「?」
「実験でボロボロになった私に操りの輪を掛ける時、ケフカが一瞬だけ別人に見えたの。
だって、凄く悲しそうな顔してたのよ?」
意識が朦朧としてたから、気のせいだと思うんだけど…と笑うティナ。
違う、気のせいじゃない。やっぱり、戦っていたんだ…。
「セリス?どうしたの?」
ティナがこっちを見た。
「…何でもない。ただ、あいつにもそんな心があったんだな…って。」
「そうね…。それに、操りの輪にはある意味感謝してる。」
「お〜い!」
マッシュだ。
「なぁにー?」
ティナが返事をする。
「飯の準備するぞ〜!」
「今行くわ!ふふ…マッシュったら、王弟のくせに料理当番に立候補したのよ?」
「好きねぇ…」
二人で顔を見合わせて笑い、マッシュの元へ急ぐ。


その夜は本当に賑やかで…賭けに大勝ちしたあなたが私達に三人分もデザートをくれたり、マッシュが持ち技を披露して大はしゃぎをしたり…賑やかで、楽しい夜だった。お腹が痛くなるほど笑い転げたのなんてどれだけぶりだろう?





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