冬が過ぎて春になる頃、あなたが帰って来たと聞いて私はいてもたってもいられなくなった。やっと咲いた小さな花を握り締めてあなたの部屋に向かったのよ。羽根飾りをつけて派手な服を着たあなたの後ろ姿に、私の胸は高鳴った。魔法が使えるようになったんだ!…って。
でも…
「誰だ…?」
あなたは…
「もう!セリスよ。おかえりなさい、ケフカ。これ…」
「ん?これは…」
壊れていた。
「あははは!いらないよ、こんなちっぽけな花。ぼくちんにはもっとゴージャスな華じゃなきゃ嫌だね!」
「…!」
放り投げられた花が燃え尽きるより早く、私は部屋から走り出ていた。


何だかよく解らないけど、胸に穴が開いたような…そんな気がした。誰もいない訓練場の隅で泣いていたら、いつの間にかレオ将軍がいた。
「…忘れろ。あいつはもう…俺達の知っているケフカではない。」
「ど、どう、して…?」
しゃくり上げながら振り返る。
「実験中に事故があったらしい。」
心が…壊れた…。
拳を固くして告げた彼に私は
「そんな…あんまりよっ…ふえぇ…ん…!」
しがみついて散々泣いたけど…彼は泣かなかった。


壊れたあなたの心には、強さへの執着だけが残った。手段を選ばずただ…ただ、強く…。


そんな時、フィガロの国の国王が帝国と同盟を結びに来た。あれはエドガーだったのね。
金髪に青いリボンがよく映えた人だと思った。彼は賢かったわ。機械技術が発達した国だから、ガストラ皇帝も協力が欲しかったもの。
「中々面白い若僧だな…。」
彼が帰った後、上機嫌で皇帝が言っていた。


「シド…私に魔力を頂戴。」
「正気か!?」
真っ直ぐに目を見つめて言った私に、シドは首を横に振った。
「やめておけ。また、彼のようになったら…」
「なってもいい。お願い、私に魔力を頂戴。」
「何故だ?」
「約束したの。」
そう、約束したの。三人で国を守ろうって。



次へ

前へ