シドに部屋の場所を訊いた私は、あなたの部屋まで行ってみた。
ドアは半開きで、他の人が部屋に入るのは何とも思ってないみたいに感じた。
暮れかけの空を窓から外を眺める後ろ姿に、私は勇気を出して声を掛けてみた。
「あの…ケフカ…さん?」
「あ…そうだけど…君は誰?」
生乾きの髪を背中に流して腕に包帯を巻いていたっけ。不思議そうに目をしばたかせ、首を傾げる仕草はまるで子供みたいだったわ。
「私、セリス。お見舞いに来たの…。」
少し驚いた顔をしたけど、すぐににっこり笑って
「そうか。ありがとう。」
と言ってくれた時は私が嬉しかった。
「おいで、椅子があるから。」
「うん。あの、お花…。」
差し出した小さな花を「可愛いね」って嬉しそうに眺めてコップに飾ってくれたっけ。
「どうしてセリスは来てくれたんだい?」
「シドがね、このお兄さんはとっても偉い人なんだよ…って。」
無邪気に答えた私に、シド博士が…とあなたは呟いた。
「それから…大変だなって思ったの。苦しくない?大丈夫?」
シドなら何とかしてくれるよ!と力説する私にあなたはクスリと笑って
「シド博士は偉大な人だけど…何をする時も一番最初が一番大変だからね。でも、誰かが一番になるんだから、別に僕でもいいよ。」
と言った。
「それに…一番ってちょっとカッコイイだろ?」
今から思えば…あなたは呆れるほど…
「わぁっ…」
本当に
「キレイだろ?」
「うん!」
呆れるほど純粋で真っ直ぐだったのよ。
「お城のてっぺんからだと、こんな風に見えるのね。」
あの時、連れてって貰って見た夕焼けは、今まで見た中で一番キレイだった。
「ベクタは他の街よりも空気が汚れているけど…だからこそこんな真っ赤な夕焼けが見られるんだ。」
「ふぅん…」
「汚れてるからって事もあるんだよ。だから、この先に何があっても…悪いことばっかりじゃない。」
私の頭を撫でながら、この実験が成功したら沢山の人たちが幸せになれるんだって言った顔は誇らしげで…私はそんな笑顔が大好きだった。
それ以来、私は暇さえあればあなたに会いに行っていた気がする。ひょっとしたらシドよりもあなたに懐いていたのかもしれない。実験が進むにつれて傷だらけになって行くのは凄く不安だったけど…少しでも気を紛らわせたら…って思ってた。
そしてあの日…
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