「殺せ、その剣で」
魔大陸の上、あなたは私を見つめる。
私はその剣を握り、さっきまで一緒にいた仲間を見た。
「セリス!」
悲しそうな顔…。
この人達を殺したら、私は助かる。
殺したら?
ケフカ、あなたは…
本当のあなたは…!!

ガストラ帝国
魔導実験体第1号
ケフカ=パラッツォ
強大な魔力と引き替えに狂ってしまった狂気の魔導士…
私は…




初めてあなたを知ったのは魔導研究所。
研究員が大勢いるその中で、私はシドに手を引かれていた。
そこは不思議な所。
沢山並んだ大くて透明な筒の中には、色々な幻獣がいる。羽根が生えている人や不思議な動物が、沢山。
別の部屋に一つだけ、人が入った筒があった。
「ねぇシド、この人は何をしてるの?」
薄青い培養液の中に浮かんでいたのは若い男の人。
薄茶色の髪がゆるやかに広がり、人工呼吸器や色々なチューブが身体のあちこちから生えている。
「このお兄さんはね、国の為に協力してくれてるんだよ。」
「国のため?皆の…ため?」
苦しくないのかな…。
場違いかもしれないけど、そんな気持ちがよぎった。
「あぁ、そうだよ。彼は皆のために…」
ビー!!
突然警告音が鳴り響き、にわかに研究員の動きが慌ただしくなる。
さっきまで静かだった男の人は苦しそうに首を振った。
「ごめんな、セリス。部屋に戻ってなさい。」
目の前の光景に驚きながらも私はシドの言葉に頷き、入り口に走りかけて振り向く。
「後でお兄さんのお見舞いに行ってもいい?」
「もちろん。落ち着いたら呼びに行くよ。」
穏やかなシドの笑顔に安心して笑顔を返し、私はお気楽な気持ちのまま研究所を後にした。
背後で聞こえる研究員達の叫び声も気にしないで。
そう…
その時私は知らなかった。あの実験の恐ろしさを。



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