一方…
「びっくりしたわ…。」
廊下を歩きながら、シュラはふるふると首を振った。
「あいつが女の子を誘うなんて。」
「そうなんですか?」
「えぇ。今まであいつにアタックした女の子は山ほどいるけど、みんな失敗してるらしいわ。ね、部長?」
「そうですね。俺は聞いた事ないですよ。」
生徒会長のナイラといえば女子の憧れの的だ。その容姿は文句のつけようが無い程に美しい。
まぁ、男らしい美しさではないのだが…それでも整っていることに変わりはない。
「これでもかっていうくらい近くに女子がいないんだ。」
人気はあるが簡単には近づけない。親しくしている生徒も少ない。
こんな言い方は失礼かもしれないが、ユーロの頭には、財宝に囲まれた孤独な王様の姿が浮かんだ。
薄暗い中、淡く輝く宝冠と山ほど積み上げられた財宝。一人で玉座に座る国王。他には誰もいない広間。
寂しい人なのかもしれない、と思った。
「でも、書記さんは女の人でしたよね?」
しかもスタイル良しな。
ユーロは首を傾げる。
「あぁ、ルピーね。あの子は特別。あいつとは姉弟みたいなものらしいから。
しかし…この子があいつのタイプだったのね、モロに。」
「……。」
一目惚れ?あれが…でも、自分ではあまりピンとこない。驚きが強すぎて…
「初めて一目惚れの瞬間を見ましたよ。」
エーレがクスクスと笑う。
「ユーロちゃんはどう思うの?あいつはどうだった?」
「えっと…面白い方でした。」
やたらとテンションが高かったが。
「まぁ、折り紙つきに明るいから見てて楽しいわよ。」
「はぁ。」
そういえば、シュラとも仲が良さそうだったが…。
四人が部室に戻ると、リラとマルクが見るからに怪しげな色をした液体を掻き回していた。
紫というか赤黒いというか…
「あ、お帰りなさい。」
リラが顔を上げる。
「順調?」
「ばっちりです☆」
パチンと片目を瞑るリラ。
「あの…一体何を?」
ユーロは恐る恐る尋ねた。
「体育祭で使う薬だよ。」
フランが説明してくれた。
「この学校の体育祭はな、競技によっては道具を使っていいんだ。障害物リレーとか部対抗リレーとか。ただしスペルは禁止。神学生が圧倒的に有利だからな。」
「へぇ…楽しそう。」
「あー‥障害物リレーとかは半端じゃないから…気をつけた方がいいぜ。」
何故か憂鬱そうな顔になるフラン。
「う、うん…。」
何なんだろう、この学校…。
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