そんな日もあるさ。



「センセー、今日の化学は〜?」
ルーブルが教室に入るなり男子生徒の声が飛んで来る。
「あぁ、久々の授業だからちょっと変わった実験でもやるか?」
「あ、それ賛成!」
何人かが一斉に振り向いた。
「よし、じゃあそうしよう。」
出席簿を教卓の上に置き、ルーブルはパンパンと手を叩いた。
「静かに!皆、GW明けで休み気分が抜けないかもしれないが、転校生を紹介する。」
クラスに少しざわめきが広がり、そしてすぐに静かになった。
「入ってくれ。」
キィ…パタン…
「……。」
少しだけ緊張した顔で教室に入って来たのは銀髪の女の子だ。
ルーブルは黒板にチョークで名前を書く。
「さ、適当に挨拶でもしてくれ。」
「はい。」
女の子は頷き、口を開いた。
「一昨日引っ越してきたばかりなのでこの街の事はよくわかりませんが、どうかよろしくお願いします。ユーロと呼んで下さい。」
そしてペコっと頭を下げる。
「ん、じゃあ皆、仲良くしてくれ。席は…あそこだな。」
「はい。」
こうしてユーロの新しい学園生活は幕を明けた。


一週間後…
隣の席の女の子はカリアというらしい。見た目通りに活発な娘で、すぐに仲良くなった。
「ね、ユーロ。部活は何処にすんの?」
「え…。」
考えていなかった。
と、いうか校舎内の地理やクラスメイトの名前を覚えるのに必死で考える余裕が無かった。
「私、バトン部なんだけどさ、一緒にどう?」
弁当を広げながらカリアは尋ねてくる。
「んー‥鈍いんだ、私…。だから、文化部にしようと思ってるの。」
「ちぇっ残念だなぁ。」
「えへへ…ごめんね。」
「いいわよ、やっぱり部活は好きな事しなきゃ。」


そして放課後、廊下を歩きながらユーロは考えていた。
(手芸部か…吹奏楽部かなぁ…合唱部も…)
靴箱へ向かう途中、後ろからもの凄い勢いで走ってくる足音がした。
たぶん…二人位。
「知らん、こうなったら拇印だな。」
「とにかく職員室よ!!」
聞こえた会話はそれだけ。
あっという間に通り過ぎて行った。
(すごい…陸上部の人かなぁ…)
ぼんやりと、そんな事を考えて、足を踏み出すと…
カサッ
「?」
足元に一枚の紙が落ちていた。
拾い上げると、調理実習のレシピだった。
「…。」
(失くしたら大変な物だ…。職員室って言ってたっけ。)
ユーロは慌てて職員室へ走り出した。




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