「美味しいですの?」
ミュウは興味深々だ。
「ん?あぁ。でもこれ、何だろ?確かに甘酸っぱいけどオレンジじゃない気がする。」
「メニューにはオレンジパフェとありましたけどねぇ。」
ジェイドは紅茶を飲みながら店内を見ている。
「まぁ、でも中々イケるよコレ。ジェイドもどうだ?」
「その手には乗りませんよ。」
「ちぇ。」
「まぁ、一口だけもらいますか。」
そう言ってティースプーンで少しだけすくう。
「ふむ。」
「な?」
ルークは中のアイスクリームが溶けないようにぱくぱくと口に運んでいる。
「お、これはオレンジのシャーベットっぽい。」
「そうですか。いや、とてもニンジンとは思えません。」
「!?」
ルークの手が止まる。
「に、ニンジン!?」
「えぇ。」
にっこり。
「〜〜〜〜!」
「ど、どうしたんですの!?」
「…ダメだ。もう食えねぇ…。」
「?」
「ニンジンなんか食えるかっつの!」
「なんでですの?ニンジンは美味しいですの。」
「じゃ、お前にやる。」
「…ミュウ…お腹いっぱいですの…。」
「あー!このブタザル!」
ルークはミュウの耳をぐいぐい引っ張る。
「みゅうぅぅぅ!」
「こらこら。動物虐待はいけませんよ。」
「ジェイドのせいだろ!」
「嫌いでしたか?」
「…好きじゃない。」
「それは失礼。まぁ、頑張って下さい。ガイも女性恐怖症を克服したことですし。」
あなたは死ぬ程ニンジンが恐いですか?
と、言外に彼が言っているようで…
「わ、わーったよ!」
ルークはムキになって食べ始めた。


いい加減、パフェが無くなった頃…
「ルーク!」
アニスが店に入って来た。
「ずるいよ!アニスちゃんが戦闘技場で頑張ったっていうのにお茶なんてしてる〜!」
「いや、違っ…」
「ずるいですわよ、ルーク?」
ナタリアもツカツカと歩いてきた。ティアも一緒だ。
「しかもお前、何食ってんだ?パフェか?」
ガイが半眼でつついてくる。
「…ニンジンパフェだ。」
ルークが苦々しく呟いた。
「何で?お前、嫌いじゃなかったか?」
「…俺、克服してやるから。アッシュなんかに負けねー。」
「アッシュがどうかしまして?」
ジェイドと話していたナタリアが振り向く。
「何でもない。」
「皆さ〜ん、今日のおやつはルークの奢りだそうですよ。」
「はぁ!?」
「やった〜♪ファブレ子爵万歳♪」
アニスが隣のテーブルに座る。
「ジェイド!」
「大丈夫です。最初の約束は守ります。」
それにしても4人分だ。
「金がねぇよ!」
「ま、稼いでくれ。無料だろ?バガボンド息子。あ、俺ホットケーキとアイスコーヒー。」
「…。」
ルークは一縷の救いを求めてさっきから黙っているティアを見た。
「…午後のケーキセット。」
「っておい!」
ルークの声に、ティアがパッと顔を逸らした。
「い、いじゃない別に。…可愛いもん…。」
「あ、ティアが頼んだやつ可愛い〜♪アニスちゃんも〜。」
「あー!頼んだ物に文句言ってんじゃねー!!」
「解ってますよ。」
『あはははは…』




そんなある日の午後。
エルドランド突入まで、あと5日…





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